HAPON人インタビュー:Epiphany Works (3) クオリティと収益、どちらも失わない働き方を目指して

HAPONで働く人を紹介する「HAPON人インタビュー」、気鋭のプロデューサーズ・カンパニー、Epiphany Works。

気鋭のプロデューサー集団Epiphany Worksへの連続インタビュー。前回までは、現代アーティストのマネジメントからスタートしたEpiphany Worksがジャンルの枠を越えたプロデュース活動をするまでの道のり、そして、近年、代表・林口さんの故郷である富山県の地域振興に関わるまでの軌跡をお伺いしました。

そんなEpiphany Worksは、昨年、東京―富山の2拠点体制を決断。東京オフィスのスリム化に当たって選んで頂いたのが、我がHAPONだったのでした。
最終回の今回は、Epiphany WorksのHAPONでの日々と、そして、好きなことを仕事にしながら利益も上げて行く‥そんな理想の働き方を実現するためには何が必要なのか、お話を伺ってみました。


Epiphany Worksの東京オフィスがある、HAPON新宿



HAPON人インタビュー:Epiphany Works(3)
『クオリティと収益、どちらも失わない働き方を目指して』

HAPON(以下、H):まず最初に、HAPONを知ったきっかけを教えて下さい。

林口:友人に誘われて、“HAPON富山会”のイベントに参加したのがきっかけですね。その後何回か別のイベントにも遊びに来て‥‥面白いのは、会いたいと思っていた人にここで会えるんですよ。例えば富山の建築家集団51%(五割一分)。彼らにずっと会いたいと思っていたのですが、何故か富山ではなくHAPONで会えました(笑)。
でも実はこれは単なる偶然ではなくて、地方活性化について考えていること、利益追求だけを目的としていないこと‥‥理念の上でHAPONと共通する点が多いからこそだったと思うんですね。そんなこともあって、ここにオフィスを置いてみたら面白いんじゃないかな、と。

H:なるほど。

信田:僕は今、ほぼ毎日HAPONへ来て仕事をしていますが、この環境にすごく満足しています。一番気に入っているのは、適度に色々な人に会えることなんですよね。以前は外部の方との打ち合わせがなければ、自分たちのオフィスで黙々と仕事をしていた訳ですが、ここではちょっと気分転換にオープンエリアに出れば、誰かしらがいて話が出来ますよね。それがいいんです。

僕は大きな会社に勤めた経験もあるから思うのですが、大きな組織って良くない部分もたくさんあるけど、色んな人がいて、思いがけない話を聞いたり、隣りの部署が仕事を受注して「やったぞー!」と拍手が上がるのが聞こえて来たり。で、「俺たちも頑張ろうぜ」、なんて。そういう意外性や影響し合うことの面白さがありますよね。

HAPONにいると、気の合うメンバーと小さな組織で働きながら、でも、大きな組織の活気も味わえる。そんな“いいとこ取り”の魅力があると思うんです。他の入居者の方が「こんなプロジェクト取れたんですよ!」なんて嬉しそうに話しているのを聞くと、内心「うちも頑張らなきゃ」と思いますしね。



H:そもそも入居者の顔触れが面白いですものね。

信田:そうなんです。僕が思うにそれは、HAPONが新宿にあるということも大きく影響しているんじゃないかな、と。シェアオフィスは都内に幾つもありますが、結構街そのものに規定されるところがあると思うんですね。渋谷だと、IT系。原宿・青山だとデザイン系。その雰囲気をかもし出せてないと何となく道を歩きづらいような。でも、新宿は、いかがわしい歌舞伎町もあればオフィス街もあるし、アジアの人もいっぱいいるし。あらゆるレイヤーが混ざり合った街ですよね。

一つ例えて言うと、20世紀初頭にジャズを生み出した街、ニューオーリンズは、歴史的に様々な文化や人種が入り混じった場所でした。とんでもなく新しいものって、何か違ったものがせめぎ合った時に生まれると思うんですよね。HAPONはそういうカオスから生まれるエネルギーに魅力を感じている人たちの集まりだから、自然と顔ぶれも面白くなる。


ここが、信田さんが出勤するEpiphany Worksのブース


H:確かにそうですね。その中でも特にEpiphany Worksは、HAPONの目指す働き方を体現されているように思うんです。利益追求だけを目的に働かない。アート、或いは美意識ということを大切にする。日本の地方に目を配る。また、自分の仕事で何かしら社会の役に立ちたい、という願い。これらのことを実現しつつ、でも一方で、次にやりたいプロジェクトに回す分のお金はちゃんと回収する。これって多くの人が望んでいながら、なかなか実現出来ない働き方だと思います。最後にお訊きしてみたいのは、どうやったらこういう風に働けるんだろう?という素朴な質問なんです。

信田:まず現実的なことからお話しすると、僕たちが継続して来られたのは、ちゃんとお金になるプロジェクトもして来たからなんですよね。マネジメントして来たアーティストはCM音楽や商業的な映像やデザインの仕事も出来る人たちでしたし、助成金の出るコンペに参加して仕事を取ることもあります。音楽イベントのブッキングやプロデュースを請け負うこともあります。何か非常に美しく、純粋アートだけをやって来た訳ではないんですね。また、いくらやりたいことであっても、多額の負債を負うような無理も絶対にもしませんし。

H:とは言うものの、クライアントとアーティストの意見が対立するような局面で、板ばさみになることもありませんか?

林口:クライアントに言われたことをそのままアーティストに伝える、アーティストの意志をそのままクライアントに伝える…それではただの伝書鳩ですよね。もしも意見がぶつかることがあっても、それぞれの相手をよく理解した上で、前向きに物事が進むように伝えること。そこは工夫するようにしています。音楽家のスティーヴ・ジャンセンがそれを称して、「君たちがやっていることは、クリエイティヴ・マネジメントと言うんだよ」と教えてくれました。


Epiphany Worksが昨年制作を手がけたiPadアプリ「ダライ・ラマの般若心経」


H:なるほど。だからこそアートとしてのクオリティを保ちながら、お金の入る仕事を継続させられる訳ですね。

林口:はい。そしてもう一つ。すごく根本的なことですが、マネジメントやプロデュースって、細かいことばかりで非常に苦労の多い、尽くす仕事です。だから本当に「好きだ」「世の中に伝えたい」と思える対象じゃなければ、絶対に続けられない。これがすごく大切なことだと思いますね。

H:そして恐らく、その「好きだ」という強い思いがなければ、仕事もいいものにはならないですよね?

信田:その通りです。領域横断的に様々なことに取り組んで来たEpiphany Worksですが、僕たちが心から「好きだ」「面白い」と思える作品を作る人や、心から面白いと思えるプロジェクトだけを扱って来た。そこには一貫性があるんですよね。

林口:結局、どれだけ強い意志を持てるか。それがあれば、例えば私がアートを志した時のように(*第1回インタビュー参照)、会いたい人には会いに行くし、会えるようになるし、どんな困難も乗り越える努力をする。そこに全てがかかっている。そう思いますね。


昨年の「冬のHAPON Bazaar」でのEpiphany Works出店商品



3回にわたったEpiphany Worksへのインタビュー、いかがだったでしょうか。右肩上がりの経済成長は望めない時代に、どう働き、どう生きがいを作り出すか。多くの日本人が働き方を模索する時代に、たくさんのヒントと勇気をくれるお話だったと思います。林口さん、信田さん、ありがとうございました。

『HAPON人インタビュー』ではこれからも、HAPONにオフィスを構えるカッティングエッジな仕事人にお話を伺って行きます。ご期待下さい!
(インタビュー・文 西端真矢)

HAPON人インタビュー:Epiphany Works (1) 現代アートの精神でジャンルレスにプロデュース
HAPON人インタビュー:Epiphany Works (2) 地方、伝統、置き去りにされていたものの中に可能性がある

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